話数単位で選ぶ、2017年TV(+配信)アニメ10選

今回も作画寄りのチョイスですが、他にも見所の多い話数なので未見の方はこの機会に是非。


[ルール]
・2017年1月1日〜12月31日までに放送されたTVアニメ+配信(再放送を除く)から選定。
・1作品につき上限1話。
・順位は付けない(順番は最速放送日より)。



■『ACCA13区監察課』#8 「翼を広げた王女と友のつとめ」

脚本:鈴木智尋 絵コンテ/演出/作画監督:小嶋慶祐

シリーズ終盤に向けて主人公ジーン、そして彼を取り巻くキャラクター達の過去が明かされる一篇。アバン、Aパート、Bパートと視点が流れるようにバトンタッチされていく構成がお見事。作中に流れる時間の省略も巧い。水彩調の表現や、波の処理、照明の使い方など時折差し込まれるTVアニメでは珍しいアイディアも目を惹く。


■『僕のヒーローアカデミア』#23 「轟焦凍:オリジン」

脚本:黒田洋介 絵コンテ:サトウシンジ 演出:堂川セツム 作画監督馬越嘉彦

DCコミックスのスーパーヒーロー・フラッシュ。雷を帯び超高速で走る彼の能力を実写化する際、シンプルに目で追えないほどのスピードで移動させる(残光を軌跡とする)ものと、静止した時の中でスローモーション的に動かす手法が使われている。静動の振り幅で相乗効果を生む描写だが、そこにあまり驚きはない。なぜなら日本には中村豊さんがいて、「地上最速の男」の一歩先を走っているからだ!


■『18if』#10 「α夢次元」

脚本/絵コンテ/演出/作画監督森本晃司

各話監督制を敷き、それぞれが独自のカラーを打ち出すシリーズの中でも、ひときわ目立つ異色作。様々なアーティストのPVや『永久家族』『音響生命体ノイズマン』と、常に唯一無二な仕事を残してきた森本晃司さんの、美意識を爆発させた画づくりによって、稀有な映像体験が味わえる。


■『ボールルームへようこそ』#11 「評価」

脚本:末満健一 絵コンテ:板津匡覧、原恵一 演出:江副仁美 作画監督:名倉智史

天平杯決勝の最終種目、全身全霊で踊るクイック・ステップ。競技ダンスの世界のみならず、あらゆる表現者(もちろんアニメも)に通底する心情を代弁したモノローグにしびれる。また、止めスライドでも決して魅力を失わない強烈な画ぢからは、まるで出崎作品における杉野昭夫さんのそれだ。


■『ポケットモンスター サン&ムーン』#43 「ジムバトル!Zワザ対メガシンカ!!」

脚本:冨岡淳広 絵コンテ/演出:飯島正勝 作画監督:中野悟史

サトシ達がアローラを飛び出し、懐かしの地を訪れる「カントー課外授業スペシャル」の2週目。少年時代に「赤・緑」をプレイした世代なので、タケシとカスミの細かいネタに目頭が熱くなる。もちろんジムバトル恒例となったアクションの見どころも多く、特に大橋藍人パートのハガネールVSバクガメスは、ロボットアニメ的なスケール感とシャープな影付け&タイミングが素晴らしい。


『ブレードランナー ブラックアウト 2022』

監督:脚本:渡辺信一郎 作画監督村瀬修功

ブレードランナー」から「ブレードランナー 2049」に至る、空白の30年間を描いた短編群の1本。名作映画と地続きになったハードSFへ挑むのは、最高峰のアニメーター陣。圧倒的な画力で捻じ伏せるその姿は「ちょっとハリウッドの奴らに作画でも見してやるか」と言わんばかりだ。


■『少女終末旅行』#5 「住居」「昼寝」「雨音」

脚本:筆安一幸 絵コンテ/演出:尾崎隆晴 作画監督:中山みゆき

終末世界の中、かつて人類が創り上げた文明や習慣を「再発見」していくチトとユーリ。鉛色の廃墟でも2人の目を通せば違った景色が見えてくる。そんなイマジネーションが最も発揮されているのが、この5話だ。雨粒が奏でるメロディから、今回のみのED曲へ繋げる流れも絶妙。撮影出身と独特な経歴を持つ尾崎監督の、今後の旅路にも注目したい。(通常EDもプリミティブなペーパーアニメ風で、アニメーションという技術の「再発見」感があって良い!)


■『3月のライオン』#26 「Chapter.52 てんとう虫の木(2)」「Chapter.53 てんとう虫の木(3)」「Chapter.54 想い」

脚本:木澤行人 絵コンテ:黒沢守 演出:岡田堅二朗 作画監督杉山延寛、潮月一也、野道佳代、松浦力、浅井昭人

アニメ化において最重要回であり、最大の分水嶺。この話数の出来如何で作品全体の印象すら変わってしまいかねないほどの難しいエピソードだ。これまで使われてきた落ち着いたモノローグとイメージカットだけでなく、ひなちゃんの抑えきれず溢れ出した感情を、動的なビジュアルで真正面から描き切ったことに強く心打たれた。


■『孤独のグルメ』#1 「東京都台東区山谷のぶた肉いためライス」

絵コンテ/演出/作画:黄瀬和哉

スマートフォン向けアプリにて配信されている「タテアニメ」のひとつ。短い尺や、縦長のレイアウトなど制約も多いなか、原作の良さを生かした調理法で仕上がっている。流石、おっさんを描かせたら右に出る者はいない黄瀬和哉さん。新しいアニメの形への挑戦を応援する意味も込めて挙げておきたい。


■『Fate/Apocrypha』#22 「再会と別離」

脚本:三輪清宗 絵コンテ/演出:伍柏輸 作画監督:伍柏輸、浜友里恵、りお

アクション、エフェクト増し増しの、2017年ナンバーワン作画祭り。マスターの召喚に応じ、世界各国から若きアニメーター達が集結。その力を存分に振るった画面は圧巻の一言だ。パワーの有り余るサーヴァントをまとめあげた(令呪を使った?)、伍柏諭さんの手腕も光る。英雄叙事詩のように後年まで語り継がれていくのは間違いない。