話数単位で選ぶ、2016年TV(+WEB配信)アニメ10選

今回も作画寄りのチョイスですが、他にも見所の多い話数なので未見の方はこの機会に是非。


[ルール]
・2016年1月1日〜12月31日までに放送されたTVアニメ(再放送を除く)から選定。
・1作品につき上限1話。
・順位は付けない(順番は最速放送日より)。



■『この素晴らしい世界に祝福を!』 #1 「この自称女神と異世界転生を!」

脚本:上江洲誠 絵コンテ:金崎貴臣 演出:吉田俊司 作画監督:北村友幸、鵜池一馬

金崎貴臣さんのコメディセンスと表情豊かなキャラクターデザインが見事に融合した第一話。世界観や状況の説明をこなしつつ、しっかりと笑いもとる掛け合いのテンポと間が秀逸。総作画監督として菊田幸一さんが文字通り山のようなカットをチェックし、ノリは軽いが安っぽくならない画面構成も良かった。来年1月にスタートする第2期が、2017年の「アニメ初笑い」になりそうだ。


■『大家さんは思春期!』 #4 「大家さんは世話焼き!」

脚本: 阿久津奈々 絵コンテ/演出:小川優樹 作画監督:清水厚貴

今年も多くのハイクオリティ作品に参加し、獅子奮迅の活躍をみせた濱口明さんの一人原画回。細かくコントロールされた動きとオーバーなリアクションの硬軟自在な作画が見所だ。リズミカルで小気味良いチエちゃんの身振り手振りがとにかく可愛い。こんな大家さんのいるアパートなら家賃10万円までは出せるぞ!


■『くまみこ』 #3 「伝統を守る者」

脚本:池谷雅夫 絵コンテ:入江泰浩 演出:堂川セツム 作画監督:武藤京子、保村成

フェティシズム薫るふくらはぎ描写から始まり、パースの強調された広角レンズ、様々なコスチュームに身を包んだまちなど、バラエティに富んだ画作りが楽しい一篇。勢いのある若手を集めた原画陣の割り振りもハマっていて、随所に各人のこだわりを感じる。ところで、動画工房グロス回にたびたび現われる堂川セツムさんとは何者だろうか?


■『モブサイコ100』 #5 「OCHIMUSHA 〜超能力と僕〜」

脚本:瀬古浩司 絵コンテ/演出/作画監督:藤澤研一

冴えない主人公モブ VS 他校のイケイケ裏番長テルのエスパー対決。10選候補にと考えていた『おそ松さん』18話「逆襲のイヤミ」を上回る物凄い熱量に驚かされた(どちらも藤澤研一さんを中心に、共通するスタッフが関わっている)。念動力を使ったド派手なアクションもさることながら、本作のテーマの一つ「超能力の使い方」を問答する必死の形相も見応えがあった。


■『NARUTO 疾風伝』 #696&697 「最後の闘い」&「ナルトとサスケ」

脚本:宮田由佳 絵コンテ/演出/作画監督:山下宏幸

最高の友であり、終生の好敵手――ナルトとサスケのラストバトルを描いた1時間スペシャル。『NARUTO』133話を彷彿させる、息もつかせぬ組み手争いと多彩な忍術の前篇。ボロボロになっても決して退かず、意地を張り泥臭く殴り合う後篇。幼少期から積み重ねてきた時間の上に成り立つ、究極の「大喧嘩」だ。劇伴を抑えた静寂のなか、鈍い音がこだまする緊張感が堪らない。


■『Pokemon Generations』 #4 「The Lake of Rage」

脚本:冨岡淳広 絵コンテ/演出:柳沼和良 作画監督:赤井真吾、末澤慧

ゲームをもとにシリアスな語り口で再構築された海外向け配信シリーズ。『XY&Z』『サン&ムーン』にも傑作回の多い今年のポケモンだが、画面のゴージャス感で選ぶならこれだろう。室内で大暴れするカイリューは対比も相まって迫力満点。ロケット団のどこか間の抜けた挙動も面白い。残念ながらクレジット表記は無いが、多くのスーパーアニメーターが参加しているとの噂。なお、日本語に翻訳されたバージョンも徐々に公開されてる


■『舟を編む』 #2 「逢着」

脚本:黒柳トシマサ 絵コンテ/演出:長屋誠志郎 作画監督新田靖成、島沢ノリコ、佐古宗一郎

食べる、歩くなどの日常芝居を強気に編み、難しいアングルもいとわない、チャレンジングな絵コンテが印象深い好編。もちろん、それを実現した青山浩行さんの仕事ぶりも素晴らしい。コンテ・演出を務めた長屋誠志郎さんは、アニメミライ2013の『アルヴ・レズル -機械仕掛けの妖精たち-』に若手アニメーターとして参加し、その後演出家に転向。全編を歌番組風に仕上げた『少年ハリウッド -HOLLY STAGE FOR 49-』10話など、これまでも意欲的なエピソードを連発している要チェックの新鋭だ!


■『奇異太郎少年の妖怪絵日記』 #4 「経立と挟間の管理人」

絵コンテ/演出/作画監督:川野達朗

年齢を重ね妖怪化したハムスター達が繰り広げるコミカルな小話。絵コンテから原画までのすべてを川野達朗さんが担当し、柔らかく伸びやかな描線と遊び心のあるポージングが愉快。先に挙げた『大家さんは思春期!』もそうだが、多数のスタッフが携わる現代の制作環境にあって、ショートアニメというかたちで個人の仕事を堪能できるのは嬉しいところ。


■『クラシカロイド』 #4 「さまよえる後輩」

脚本:土屋理敬 絵コンテ/演出:山下明彦 作画監督奥田淳

スタジオジブリ作品のようなテンションでモブ達が賑わう、テレビアニメの限界を超えたお祭り回。老若男女ひとりひとりをきっちりと描き分け、それぞれに異なったライフスタイルがあることを感じさせる表現力は圧巻の一言。踏切、車、凧などの無機物を絡めたレイアウトも抜群に決まっている。「ポスト宮崎駿」なる言葉が巷を騒がせていたが、山下明彦さんの存在も忘れてはいけない。


■『フリップフラッパーズ』 #6 「ピュアプレイ」

脚本:綾奈ゆにこ 絵コンテ:立川譲 演出:博史池畠 作画監督:田中志穂、鶴窪久子

美術部先輩・彩いろはの過去を体験するパピカとココナ。ピュアイリュージョンでの行動が現実に影響を及ぼす、物語のターニングポイントだ。落ち着いたカット割りとカメラワークで丁寧にドラマを紡ぎ、各話の奇抜なビジュアルコンセプトやスピード感溢れる展開だけが本作の魅力ではないことを証明した。感情によって変化する暖色/寒色のカラーリングも素晴らしく、最後におばちゃんの顔に添えられる「彩り」が胸を打った。



2016年を振り返ってみると、10月放送開始のタイトルが豊作揃いでしたね。『Occultic;Nine-オカルティック・ナイン-』『ハイキュー!! 烏野高校 VS 白鳥沢学園高校』『ユーリ!!! on ICE』『響け!ユーフォニアム2』など、毎話「まるで10選候補のバーゲンセールだな」といった内容で、なかなかワンエピソードを選ぶのが難しかったです。まだ年末に放送を控えているものもありますが、コミケが迫っているのでご容赦いただければと。


それでは来年も、素晴らしいアニメに祝福を!